【短編】穴

その後も、お母さんが子供の頃、住んでいた古い母屋や土蔵などを探検した。 


巻き物や壺など、この家に代々伝わるものを目にしたときは、なんとなく心が騒ついた。 


江戸時代から続くというお母さんの実家は、おじいちゃんで六代目だ。


世の中には、もっともっと、由緒正しき家があるのだろうけれど…


こうして何代にも渡って『山田家』を守っていることが、子供ながらに凄いなぁと思った。


そんな横で、お兄ちゃんは……


「ここにあるやつ、『何でも鑑定団』に出したらいくらぐらいになるかなぁ?」


と、呑気なことを言っている。


片っ端から箱を開けて、中身を確かめている。 


「これなんかさぁ、めちゃくちゃデカイのに勿体ねえよな!」


指差す方を見ると、高さが50センチはある見事な壺が、所々、罅が入っている。 


「でもさぁ、意外と、小さいものの方が価値があったりするよね?」


などと、鑑定士を気取って、夢中であれこれ物色を続けた。