ジュノは俺の腕の中で横向きにうずくまり、遠慮がちに抱きついていた。

伏し目がちに物憂げな表情を浮かべているその姿はとてつもなく妖艶で、けれど何か性的なものとは違うものを、俺は感じ取っていた。

『何か飲む?』

不意に身体を起こし、少しぼさっとした栗色の長い髪を無造作に垂らした姿はとても17歳とは思えない魅力に溢れ、俺はつい一瞬魅入ってしまった。

『あ、ああ。何でも良いよ』

ジュノはいつもの含みのある笑みを浮かべ、下着を身に付けた。真っ白な肌に黒い下着は良く映えた。ジュノはニヤッとこちらを向いて俺のワイシャツを着て立ち上がった。ワイシャツだけを着て。下は...そのままだった。

『ビールでいーいー⁇』

伸びをしながらリビングに歩いて行き、ジュノは背中で聞いた。
いや、返事を聞く前にビールを取り出し、自分はウイスキーの準備をしてこちらに向かってきた。

『はい』

ジュノはベッドサイドのミニテーブルに俺のビールとグラス、そして氷をたっぷり入れた自分のグラスとウイスキーを2回に分けて運んできた。

『先生って、こういうの手伝わない人なんだね。』

お前に見惚れてたからだよ。

そんなキザな台詞を言えるはずもなく、俺はばつが悪くなって頭をかくと、ジュノは俺を見て`やっぱり'って顔をした。

本当にジュノには頭が上がらない。
ジュノには見透かされてばかりだ。

『ほら、座って』

ジュノはベッドサイドに腰を下ろしたので、俺は身体を起こし、反対側のベッドサイドに落ちた下着を拾い上げ、ささっと履いてジュノの横に座る。

『かんぱーい』

さっきの妖艶な様子とは裏腹に、ジュノは無邪気な子供みたいにくしゃあっと笑ってグラスを重ね合わせた。グラスはやけに重かった。ジュノのことだ、きっと良い物を使っているのだろう。

ワイシャツのボタンはほとんどしてなくて、黒い下着が透けたり直に見えたり、やっぱりジュノは男というものを天才的に知っているようだった。いや、もしかしたらこれがジュノの自然体なのか...?

俺はジュノのことを何も知らない。

『お前なあ...俺が教師って分かってて未成年飲酒なんかしてんのか⁇』

俺は気をそらすために今更そんなことを言い、グラスに口をつけた。
ジュノはグラスを左右に動かして氷をカラカラ鳴らし、脚もリズム良くブランブランさせて何やらご機嫌だった。これっぽっちも反省なんかしていないようだった。

『せんせーだって生徒とこんなことしてんのにー⁇』

ジュノはグラスを置いてこちらを向き、ワイシャツの首元をさらに緩めた。そこには、俺がつけた証がいくつも残されていた。

まっすぐな瞳で俺を見つめ、首をかしげて片方だけ眉毛をクイっと上げたかと思えば、ジュノはニヤリと笑う。

『...っ...』

俺は言い返すことができず、欲望やら焦りやらで渇いた口をビールで一気に潤した。
そして、

『んんっ...』

ジュノも潤してやった。

『ビールの口移しなんて、お酒の美味しさ落ちるって』

首筋をつたっていくビールをすくって舐めながら、とろんとした目つきで囁くジュノに、もう俺は止まらなかった。

ジュノの何もかもを知りたい。

『ジュノっ...』

俺はベッドに押し倒し、むさぼるようなキスをしながらワイシャツのボタンを外していった。