村星君が所さんと婚約者同士だろうが何だろうが、私にああだこうだ言える権利は無い。


だけど……やっぱりツライものはツライ。


想い人に結婚を約束した人がいるって知って、“あっ、そうなの?”で済ませられる人間っているの?


「湖柚、オレの目見ろよ」


ずっと俯いたまま微動だにしないでいると、村星君が動いた気配がした。


チラッと目線を上げると、目の前の男の子が片手を私に向かって伸ばしている。


「………っ」


「えっ……」


咄嗟に2歩程後ずさると、ビックリした様な声を出された。


ダメだ…もう我慢出来ない。