それを見て、ミカは思った。この人は大丈夫。優しい人だと。
そう、自分に思わせた。
この男の気持ちはわからない。けれど、ささいな気まぐれでも嬉しかった。

「ありがとう。」

ミカはうつむきながら男に言った。

ミカは、自分から手を出してみた。どうなっても良いとそのときは思った。
男は、ミカの腕を握り、ゆっくりと歩き出した。ミカは、もう片方の手も男の腕に添える。


ミカは手を見つめる。彼の手は、とても暖かかった。
雨の中にいたことを忘れさせるくらいに、ミカは安らいでいた。

歩いて行くと車についた。
乗ったら、もう後戻りはできない。
でも、このままここにいるわけにもいかない。
後で、訳を話そう。しばらくは、助けてもらうしかない。