ダイチは傘を持ち、車から飛び降り駆けだした。そして女性のもとへ、あっというまに到着した。
その女性は、25か6くらいの年齢に見えた。おとなしめのワンピースを着ていて、雨水を吸ってじっとり重くなっている。少し汚れているようにも見えた。

女性に傘を差し向けたとき、ダイチはその女性が長時間雨の中を歩いていた事と、泣いていることに気がついた。
雨なのか涙なのか、最初はわからなかったけれど。その女性は確かに泣いていた。

ダイチは、何も聞かない。ただ、女性に傘を差し伸べた。
何も聞かなくとも、何か訳があることはわかる。それも、悪い訳だろう。
そもそも、この雨の中、こんな山道にいることがおかしいのだ。

女性を傘に入れたせいで、傘に収まりきれないダイチの体半分が冷たくなってきたころ。
その女性は言葉をつぶやいたように感じた。

雨で聞き取り難かったけれども、確かに小さく何かを呟いた。
ダイチの気持ちは、今までに感じたことの無い変な気持ちだった。
同情なのか、なんなのか。雨で透けた女性の服のせいなのか。
何かはわからない。けれど、その女性を一人には出来なかった。どうにかしてあげよう。