メモをテーブルに置く。横に携帯がおいてあった。
ストラップは一つだけ。紐のストラップ。
それを見て大地は、彼女はおとなしい人なのだと思った。

腕の傷を消毒したときも、彼女は痛むそぶりも見せない。ぐっすりと眠っている。
そしてバンソウコウを貼り、持ってきた布団と毛布を被せ直した。
持ってきた服を、彼女が服を脱いでおいておいたところおく。
彼女を起こさないように、ゆっくりと扉を閉めた。

部屋に戻り、ダイチは仕事を始めた。
パソコンの前で、今日が締め切りの原稿を書いていた。

ダイチは今、新聞の連載小説を書いている。
少し前まで、ダイチは少しだけ有名な小説家であった。

けれど、彼女がいなくなってからは少しスランプに陥っていたのだ。
ダイチは同時期に、声も失い、人との関わりを拒んだ。
そうして仕事は減っていったのだ。