「リュンヌの支度は
できているのか?」






慌ただしく動き回る使用人の一人を
ある男が掴まえた。




この男 ―レイ― と
呼ばれるこの男こそ
エストのトップ。






透き通る銀髪に
深い群青色の瞳を持ち、

胸にいくつもの勲章を付けた軍服姿は
正に将軍という名に相応しく堂々たるものだった。








「は、はい。
つい先程小会議室に向かわれたかと…」







使用人の男は新入りなのだろうか、
緊張した顔付きで答えた。









「そうか。
なら良い。

仕事の邪魔をしてすまなかった。
続けてくれ。」








レイはそれだけ言い
使用人の肩に手を置くと、

小会議室へと足を向けた。





広く、
人が交差する廊下をスルスルと
通って行く。









長身なはずだが、
細目の体つきは大男に見せない。



いや、
童顔とも言える優しい顔立ちの
せいなのかもしれない。