あつい……。





いや、厚い。
熱い……?
暑い。
……うん、そうだ。暑い。
暑い。



ワンワンうるさい蝉。
ジリジリ暑い日差しとコンクリートの熱。

俺は給水タンクの影にゴロンと横になっている。
背中の湿り気と熱さが、嫌な意味で絶妙だ。


愛読書である、分厚い漫画雑誌をアイマスク代わりにして、瞼を閉じる。

時折、頬を撫でていく風に、昨日の湿気は何処へやら……。
ついでに今日の湿気も持っていってもらいたいが、それは贅沢なんだろうか。


まぁ、それはともかく――

(いい一日だ……)

のんびりそんなことを考えて、両手を組んで自分の枕にした。




――― キィ……
唐突な音。
まどろみから俺を連れ戻したのは、錆びた屋上の蝶番だった。

――― ガチャン
分厚い鉄の扉が閉まる。

入ってきた足音は二人分だった。

俺達の学校に上靴はない。あるのは代わりの安っぽいスリッパだ。

当然、安物スリッパが細かい砂を踏む音はすぐ分かる。


二つの足音が数歩聞こえ、止まった。
俺は雑誌を顔から外し、のそりと体を起こしてみた。


普段から人気のない屋上に立ち入る理由は、だいたい決まってる。