紅蒼物語




「……ッ!
あ、洗ってるわよ!そりゃ、毎日とはいかないけれどね!
一週間に二回は洗ってるわよ!」




「え…
一週間に二回……?」





「そうよ!
あたくしの髪の毛は長いのよ!
だから、全部洗うのに時間がかかるし、面倒くさいのよ!」









……だったら髪を切ればいいのに






多分、この会話が聞こえている人達は、少なからずそう思っているはずだ。









「まあ、とにかく俺にはあの子一人だけいればいいの。 他はいらない」





幼い頃から、ずっと俺が想っているあの子。



俺を、王子としてじゃなく、普通の人として接してくれた。






鮮やかな紅い髪と、吸い込まれそうな紅い瞳を持っている、あの子の姿が目に浮かんだ。






「あの子って、誰よッ!

あたくしより、美人だというの?!」





だから、君は美人じゃないって。



声がどんどん大きくなってるよ。


そんなに興奮しなくてもいいだろうに





「君に言っても、誰だか分からないでしょ?」





「分からなくてもいいわ! 名前だけでも教えなさいよッ!」




長い顎を突き出して、キンキンと耳障りな声で言わないでほしい。




そんなに大声で言わなくても、聞こえているんだから






「知らないのに、名前知りたいの?
知ってどうするのさ」





「別にいいじゃない!
減るものじゃないんだから!

あなたって、性格悪いわね!さっさと教えなさいよ!」





俺って、性格悪いのかな?





俺の好きな人を知って、どうするんだ?





それに、あの子に会ったら、自分が美人じゃないと気づくだけなんじゃないのかな?














試験をせず、話していた俺たちに、アオはのんびりと口を開いた。





「……ねえ。
試験……始めないの………?
……失格にしちゃうよ………?」






オキと闘うのは、気が乗らないけど、失格にされたらたまらない。





俺だけが東に戻るなんて、かっこ悪すぎだからね





きっと、鈴も菖蒲も受かるはずだから






「…さ、始めようか」





……早く試験を終わらせて、あの子に会いたい