「まずは、傷を治すネ」
クロは今までと同じように、僕らの腕に尻尾を巻きつける。
奏汰は内側、僕は手の出血が酷いみたいで、しばらくジッ と待っていた。
治療が終わると、クロは僕らに向き直った。
座っていた僕らも揃って立ち上がる。
「まず… 楓は合格ネ
少し動揺した所もあったけど、それ以外は大丈夫ネ 訓練すれば、もっと強くなれるネ
相手の不意をつくのも巧かったネ」
「よっし!!」
奏汰の合否を聞く前に、僕は小さくガッツポーズをした。
合格者には、薄く笑みを浮かべるクロだけど、奏汰に向けたときの顔は無表情だった。
奏汰も何を言われるか、それとなく察しがついたみたいだった。
「奏汰は…、残念だけど不合格ネ
本を使わなければ、魔法が使えないのは戦闘において痛いネ
さっきのように、本を飛ばされたら身動きがとれないような状態になってしまうのは、戦争になったとき、すぐ狙われてしまうネ」
奏汰は、何も言わず黙って聞いていた。
きっと、奏汰も分かっていたんだろう
魔法を上手く使えない鎖部の者が、戦争に参加できないと。
それでも、もしかしたらと思わずにはいられなかたったんだろう
僕に勝てれば、合格できると。
…けど、この試合に奏汰が勝てたとしても、合格できない。
そうクロは言っている。
「ぼ、僕は、どうしたらいいんですか…
鎖部であることは、変えられないんですよ…
鎖部は何もできないんですか?
僕は強くなれないんですか…?」
奏汰の声は悲痛だった。
だけどそれは、戦争に参加したかったからではなく、ただ、鎖部でも強いということを証明したかったからだろう
戦争に参加するのが本当の目的じゃなくて、僕は安心した。
