紅蒼物語





「なんでって…仕事を終わらせたからだよ」





キョトン と何言ってるの? と言いたげな顔をして、首を傾げる英







「そうじゃなくて! …ああもう!!
なんでついてきたのってこと!!」

 



英は頼まれてないじゃない!



むしろ、来ちゃダメなのにっ!

 





「鈴、そんなに怒らないでよ。
二人が心配だったから、来たんだよ」






「心配って…
王子だってバレたらどうするの!
今すぐ戻った方がいいよ!」



 




ええと…



転送魔法の呪文ってなんだっけッ!

   









「鈴、落ち着いてよぉ」






英を魔法陣の上に戻そうと、引っ張っていたあたしの腕を掴んだのは、菖蒲だった。








「来ちゃったものはしょうがないし、
三人で頑張ろうよぉ
その方がいいかもしれないよ?」



 



うう…




「三人でやろうよぉ……ねっ?」




うるうる と効果音がつきそうなほど、潤んだ目




ああもう!!



そんな目で見ないでっ!
















「………わかった…」




 

「やったぁ!」






ああ、ほんとにあたしってあの目に弱い










「鈴って本当に菖蒲に弱いよね」
 



呆れた顔をする英に、あたしは言い返せない

 





「…ま、そこも可愛いんだけどね」





「…?
何か言った?」






英の声が小さすぎて、聞こえなかった。






「なんでもないよ」




はぐらかすように、笑う英





…ふぅーん







「それより…
英の仕事ってあまり無かったの?」






一日で終わってるし







そう言ったら、英は何故かニヤッ と笑った。






「そんなに速く仕事が終わるわけないでしょ



……偽物、置いてきた♪」



















……………は?




「……偽物…?」







「そう。 
この潜入調査って時間かかるでしょ? 俺が城を空けること、父さん許してくれなさそうだし、だったらその間、偽物に城にいてもらえば俺は城にいることになるからね」








西国にいるってバレないよ



と、ニコニコ話す英







英は、一度決めたらそう簡単に曲げるような性格じゃない、って充分分かってるつもりだったけど







まさか、仕事まで放り出してくるなんてね






「じゃあ、あの黒髪さんは」




 
もう、聞かなくてもわかってるけど






「勿論、鈴が思っている通り、俺が変装した姿だよ。
時間が無かったから、顔と声しか変えれなかったけどね



もう、菖蒲の“用事”も分かるよね」







わかってるよ。


だから、あの時ニヤッて笑ったんだ







「偽物造り、手伝わせたんでしょ?」
 






「正解♪」