「ここだ」
と、陛下が木製の扉の前で歩みを止めた。
付き人さんと話していたから、あっという間に感じた。
まるで迷路のような城の地下は、道を知らない人が入れば最低でも出るのに1ヶ月かかる。と言われてたけど………
うん。1ヶ月じゃ出れないね。あたし達だったら一年以上かかりそう
だって城の地下は、その部屋以外は、何故か魔法が使えないように、魔法封じの石でできてるんだから
瞬間移動もできないんだって
地下でさまよい歩く自分を想像してしまって、少し身震いした。
ほんと、陛下に道案内してもらってよかった。
恐れ多いけど、魔法陣のある部屋への道は陛下しか知らないらしくて、あたし達は黙って陛下についてきた。
帰りはあたし達だけだから、必死で道を覚えようとしたんだけど、すぐに忘れちゃった……
菖蒲も忘れたのか、ほえっほえっなんて意味の分からないことを呟いている。
陛下も、何の声だ? って思ったみたいだけど、菖蒲が言っていると分かって何も言わなかった。
菖蒲が変な言動をするのは、いつものことだから
でも、今日の菖蒲はどことなく疲れているようだった。
昨日の用事が長引いたのかな?
「この部屋の中に魔法陣はある。
呪文はそこの者が知っているから、任せておきなさい」
陛下はそう言うと、二人いる付き人のうち一人をつれて、戻っていった。
残ったのは、さっきあたしと話していた黒髪さん
黒髪さんは扉に手をかけ、引いた。
ずっと使われていなかったのか、扉はギギィ と重たい音をしながら開いた。