俺からお前へ

学校から帰ると、父が俺の保険証を持って
車に乗り込むところだった。

父「行くぞ。病院」

俺は無言で車に乗った。車内は父と俺の二人だけ。

二人とも無言なまま病院に着いた。


俺「検査………行ってくる。父さんは
とりあえず待合室で待ってて」

父「先生からの説明の時はワシ呼べよ」

俺「分かってる」

そう言って検査室へ向かった。

コンコン

「失礼します」

そう言って
検査室に入ると、若い女性看護師と中年男性医師が何枚もの書類を見ていた。

医師「国山了太くんだね?」

俺 「はい‥」

医師「今から血液検査するから腕出して」

そう言われて腕を出すと、看護師が注射器を使って俺の血液を吸い取っていった。

俺はその自分の赤い赤い血を見ながら

「ガン…」

と呟いた。それを聞いた看護師は、何も言わずにただ俺の腕に小さなガーゼを貼った。

しばらくボーっとしていた。

すると、白衣を着た30代くらいの男性が
試験管に入った俺の血液を持ってきて、
一枚の紙を医師に渡した。
その紙を見た医師は、小さく頷いて俺の方を向いた。


医師「悪性のガンが正式に判明したよ…」

俺 「治りますよね?」

医師「まだ分からない…。しかし、
精一杯 治療はしていくよ。
ただでさえ君は若い。その若い命を
早々に無くして欲しくないからね」

俺 「…………」

医師からの言葉に頷いてから、俺は検査室を出た。



待合室に行くと、父が俯いたまま聞いてきた。

父「検査はどうだったか、了太」

俺「悪性のガンだって」

父「そうか………」

それから父は何も言わなかった。