学園スパイラル~デッドヒートに焦らせて~

「うぃっす匠兄貴!」

 健が料理を運んでくるあいだ、テーブルで待っていると茶髪の男が声を掛けてきた。

「鴨居さん、お久しぶりです」

「そんな他人行儀な言い方やめてくださいよ~。隼人でいいっす!」

 いかにも、やさぐれ方に失敗したような二十代後半の男は照れながら応えた。

 わかりやすく言えばこの年でもまだチャラい。

「ねえ、あれ誰?」

「匠くんの舎弟(しゃてい)よ」

 先ほど、お化け屋敷と化している教室の前で会話していた女生徒二人が、食事を取りながら匠を見つめる。

 どうやらクラスは違えど友達同士のようだ。