いろはにほへと



「あのあのあの、電話してたら、澤田さんも来たいって言ってくれて、その…こういう感じに…」


コソコソと理由を説明してみるが、桂馬は納得いかない表情を浮かべた。
が、直ぐに消して。


「久しぶり、澤田さん…も、合格おめでとう。」
「桂馬くんこそ、おめでとうー」

愛想笑いを浮かべて、席に着いた。
後が怖いなと思いつつも、なんとかこの場が収まりそうなことに胸を撫で下ろす私。

そこへー。


「はい、父特製、しめのつけ麺ですよー」


キッチンに何やらこもっていた父がトレーにのせて料理を運んできた。
そして、はた、と桂馬を見つめる。


「あ!初めまして。阿立桂馬と言います。今日はお招き頂き、ありがとうございます。」

座っていた桂馬が慌てて立ち上がり、ぺこと頭を下げる。
阿立桂馬といえば、近所では大騒ぎになる程の有名人だが、生憎家にはテレビもネットもない為に、父も母も彼を知らない。


「いいですよ。そんな畏まらなくて。初めまして、ひなのの父です。娘から忙しい方だって聞いてますけど、そんな中わざわざ時間を割いて来てくれて、本当にありがとうございます。」

「あ、いえ、そんな、お礼を言うのは、俺の方なので。」

父はニコと笑い、丼をテーブルに人数分置いていく。


「私達は一足お先に始めさせてもらってましたから、阿立くんも遠慮せず、どんどん食べてくださいね。さ、座って。」