でも、言葉が続く前に、突然桂馬が立ち上がった。
「俺が…大人?」
見下ろしていたのが、見下ろされる格好になって。
問いかけられたのに、頷くことも出来ないのは、桂馬の瞳が憂いを帯びて、何を考えているのか、全く分からなかったから。
「どこが?」
徐に桂馬がマスクを外して、全ての表情が見えるようになった時。
初めて。
桂馬が傷付いた顔をしていた事に、気付いたから。
「俺が今何を考えているのか、教えようか?」
「桂馬く…」
「ーひなは、ハルが歌えなくなった事に対して何を思った?今回マネージャーとの報道を見てショックを受けたか?会いたいのに、ひなが俺に対してどう思っているのか確認するのが怖くて、だけどひなからメールが着て、馬鹿みたいに舞い上がって、でも見つけたら泣いてた。そしてそれはきっと俺のもんじゃない。ひなはまだハルのことを考えてる。」
捲し立てるように言う桂馬の顔を、私は茫然と見つめた。
「その事実を確認する勇気もない、ひなの気持ちの整理ができるまで待つって言った癖に嫉妬でどうにかなりそうな俺の、どこが大人なんだ。」


