「やめろよ、そーいうの。別に大変じゃない。」
「でも…!」
肩を掴んで首を振る桂馬。
「俺の生きてる世界には、ルールってもんがある。小さい頃から居るんだ、どうやったら利口で一番傷がつかなくて済むかも、よく知ってる。慣れてる。」
さっきまでは、線になっていた目が、今ははっきりと開いて、これ以上言うなと訴えている。
「俺はあんたが守れたらいいんだよ。それで。」
桂馬の事は、澤田にあの後詳しく聞いて、よく知っている。
今迄記事になるようなことは一度としてなかった俳優だ、と。
注目されている大事な時期、相当の覚悟がなければあんなこと出来ないと。
「……桂馬くんは…大人ですね。」
謝罪を受け入れてもらえない私の口を衝いて出た言葉は、これだけ。
桂馬は私を守るために、キレイだった評価を汚して。
私は?
私は一体何を失くしたんだろう。
何を犠牲にしたのだろう。
手に入れたものの方が多過ぎて、手一杯になっているのに。
トモハルとの繋がりを失くした、とはっきり理解している。
それは誰かの為になったんだろうか。


