いろはにほへと

「本当は、あの時駅には居たんだ、俺。」


「ーえっ?」

驚くと同時に、だからあんなに早かったのかと納得する部分もある。


「ひなの制服は覚えてたから。でも、髪型が違うから…追いかけるの一瞬迷って…」


そこまで言うと、桂馬は再び鼻で笑う。


「あの、それでどうしたんですか…その…さっきから笑っているのは…何なんでしょう…」


「あのさーひなみたいに歩くのが早いJK居ないよ。」


きょとんとする私に、桂馬はコーヒーを飲み干して、缶をコンクリの上に置いた。


「改札抜けた辺りで、さっかさか歩く制服着た後ろ姿は、絶対ひなだと思って追いかけた。人が多くて中々距離が縮まなくて、見失っては見つけての繰り返し。で、その都度、その髪型に慣れてないから、つい髪の長い人捜しちゃって…って感じに手間取ってね。」

笑い続ける桂馬の前髪が落ちてきて、右目に掛かる。