いろはにほへと


「えっ…とですね…これは…ですね…」


上手い言い訳なんて思いつく筈もなく。


「……答えたくないなら、答えなくていい。とにかく、会えて良かった。」


狼狽える私に、桂馬はそれだけ言って、ぽんぽんと私の頭を撫でた。


「そこの自販で、なんか飲み物買ってくる。何が良い?」


場を作り直すように、桂馬が明るい声で提案し、少し先に見える自動販売機を指す。


「あ、いや、そんな、悪いです。私自分でー」

「それくらいさせろよ。久々なんだからー何が良い?」

既に歩きかけている桂馬の言葉につられて、ついリクエスト。


「じゃ、じゃあ、あったかいお茶があれば…」

「了解」


そう言って、向けた背を見つめながら、桂馬はなんて大人なんだろうと思った。

どんな魔法を使ったのか知らないけれど、会いたいと言えばこうして会いにきてくれて、言いたくないことは訊いてこない。


同い年だというのに。

彼はスマートな、大人だ。

とすると。

やっぱり自分だけが、子供過ぎる気がしてきた。