いろはにほへと


「「え!」」


洒落ボーイと地味ガールの声が重なる。

なんですと?今、なんと仰いましたか。

この、長い長い歴史のある髪を切るー???


「…俺は良いけど…良いの?」


キラボーイ、いや、芝上さんが、私の顔を覗き込む。

前髪ですら、結構勇気が要ったのに、後ろ髪もなんて、そんな勇気持ち合わせていない。

今更ながら、澤田がさっき言った、『更に思い切ってみたらいいんじゃない?』の意味を悟る。


ーこういう事だったのですね…


「大丈夫だよ。だってそのままじゃ、分かっちゃうもん。」


あっけらかんと言う澤田。


確かに。

このままだと、私がルーチェのPVに出演していることに気付いちゃう人がいるかもしれない。

だけど、あれは、それなりに化粧をしていたからで、今とだって結構別人ーーーー


「あれ、君、もしかしてー?」


ゴーン、頭のどこかで鐘が鳴った。

芝上さん、お気付きになったご様子でございます。


「しー!芝上さんちょっとそれ今ナシ!やめて!」


全然深刻じゃない感じで、澤田が注意する。

芝上さんはその先こそ言うのを止めたものの、しげしげと私を見続ける。

穴。

どこかに穴はありませんでしょうか。