いろはにほへと

いつも電車に乗る駅を通り過ぎて。


「あのっ」


雑踏の中、走っているから、自分の長い髪が、ひらひらひら、前後する。


「昼休みは…っ」


前を行く澤田になんとか叫んでみると。


「ごめんね」


自分が今言おうとしていた事を先に言われた。

澤田は何一つ悪くないのに。

予想していなかった私は、言葉を失った。


スピードを落として、振り返った澤田の表情は、心なしか暗い。

行き交う人々が、たまにぶつかり、迷惑そうな目を向けていく。


「なんか…悔しくてさ…」


そう言って、澤田は唇を結んだ。
それを見て、私の胸は疼く。

どん、と、痛む。


「悪いのは、、、私の方です…」


首を振って、肩を落とし、引かれた手を見ながら、歩くのを止めた。