いろはにほへと

「…望んでいません…」


そんな気持ちは、ない。

少しも、ない。


「…そうか…、それならいいんだ。」


何故、葛城先生がそんなことを訊くのか分からず、私は先生の顔をじっと見つめる。

その視線に気付いた葛城先生は、少し困った様に目を逸らした。


「いやな、もう進路を決めなきゃいけない時期だろう。もしご両親の手前、中条がやりたい事を諦めたんだとしたのなら、それは勿体無いなと思ってな。」


やりたい事ーーーー


「先生」


静かな教室に、朝の光が注ぐ中。




「私も一つ、訊いても良いですか。」


先生が、私の事を考えてくれた質問に。


「自分のやりたい事を仕事に出来たら、それは幸せなことではないのですか?」




私は、別の人の事を考えて質問し返した。


「自分の一番好きな事を、生涯の仕事として付き合っていけたら、幸せになるのではないのですか?」