いろはにほへと



「葉っぱ一枚は、成る程、とても大切なものですが、その葉っぱが全部じゃありません。その葉っぱは、大きな木の一部にしか過ぎない。」



どこからか、枯葉が一枚、私と父の背中との間に、ぱたりと落ちた。




「一部だけを見て、それが全部だと思ってはいけません。」



それは何にでも当てはまる事実なんです、と父は続ける。


「ひなのさんが今、苦しいと感じていても、世界も真っ暗な訳ではありません。太陽が昇って、光が降り注いで、輝いています。」


共に歩かない私を、父は数歩先で振り返って、なんとも言えない優しい顔で見つめた。


「真実も、一部分と、全体とでは、解釈が変わってくるのではないでしょうか。」


父の言葉を正しく理解できたのかは分からないけれど。


何故だか。



「ひなのさんがー慮(おもんばか)ることが出来たその時に。」



ひと粒だけ。

残っていた涙が、ポロリと転がって行った。