いろはにほへと


夜が直ぐそこまで来ている。

桂馬は、真っ直ぐに、自分を見ている。

そして、桂馬の言った事は、私の中にすんなりと入ってくる。



あぁ、そうかもしれない、と。


そもそもトモハルと出逢っていなかったら、私はあのまま。

彼の存在すら知らないままで一生を終えていたのだろう。

どこかで誰かに会って、恋という意味を知ったか、もしくは知らないままで。


そう。

トモハルじゃなくても。

トモハル以外の誰かが、トモハルみたいに接してくれたら。

父のように優しく与えてくれたら。

私は、トモハルに会わなくても、生きていく。


よく考えなくても分かる。


トモハルに逢わなかったら、逢わないまま。


平々凡々とした、人生を歩んでいた筈だ。

万が一、トモハルに気持ちを伝えて、そして、それに、トモハルが応えてくれるなんて。


そんな甘い考えは、抱かないと決めた。


もし。


もしも、宇宙に浮遊するチリたちの一粒よりも少ない確率、いや、それ以上にありえないけれど、、、トモハルも…同じ気持ちで居てくれたとしても、桂馬が言ったように、幸せになる道なんてきっとない。




だって。

どれだけ会いたくて、仕方なくても。

どれだけ傷付いて、泣いても。



トモハルは、ここに居ない。



桂馬のように、傍に居てくれない。