父の凛と響く声に、社長も母も一旦言葉を切った。

しかし、父は、その二人の内どちらの事も見ていない。



「どうして君は、何も言わないのですか?」



静かな目で。

でもしっかりと、父が見つめ、そして問い掛けた相手は、トモハルとそのマネージャー、早川だった。



「那遥は、今回のことで話せる立場ではなくてですね…」



豊橋社長は、父の矛先を知って、直ぐさま割って入ろうとする。



「僕は、君達とお話をした筈ですが。」



そんな豊橋社長を、父はあっさり無視して、なおもトモハルに畳み掛ける。



「確かに一度きりと、そういった筈です。そして、ひなのさんの安全を守る事は、それ以前の問題ではなかったですか?」




私は、怖くて。


トモハルを見る事が出来ない。



ただただ、父の横顔を見つめるので、精一杯だった。