「…もし、さ。」


顔は、画面に向けたまま、澤田が口を開いたので、一瞬独り言かと思ったが、続く言葉でそうじゃないと分かった。


「もし、今日、聴いてみて、これで終わりにできるなって、やめようって思えたらさ……いいんじゃない?青年Aにしても。」



訊かなくとも、青年Aが桂馬だと言うことは理解出来た。



「世界が違う、のは、彼も同じだから、そういう意味での苦労はあるのかもしれないけど、ちゃんと守るって言ってくれたんだったらさ、生半可な気持ちじゃないだろうし…勿論中条さんが決めることだけど。嫌ではないんでしょ?」


言いつつ、ちら、と窺うように私を見た澤田に、小さく頷く。


ー嫌、ではない。ないけど…



「ていうか、こっちとしては羨ましすぎるし!未だに実感できないし!」


澤田は口を尖らせてそう言った後、へへっと笑った。