いろはにほへと

呆然とする私を余所に、桂馬は外していたマスクとサングラスを装着する。



「聞くところによると、使えないことにあんた、携帯持ってないらしいから、これ、やる。」




「わ?!とと…」



ひょいと投げられて、慌ててキャッチすれば、掌には平べったい四角い機械。


「これ?!使い方知らないですし、高価なものだと聞いています!」



あたふたする私を置いて、桂馬はひらりと身を翻す。



「俺もう時間ないから行くわー」


「ちょっと!?」


どうしていいかわからない私は、呼び止めようと試みる。


すると桂馬が振り返って、ホッとしたのも束の間ー



「ひな。」


名前をー名前を呼んだ。私の。

息が止まりそうになっている私に、彼は更に追い討ちをかける。




「あんたきっと俺を好きになるよ。」