いろはにほへと

「どうしてここに……」


人に見られないと判断したのか、マスクを外した桂馬に、私は首を傾げるばかり。


だって、もう二度と会う事はない、と思っていたのに。

トモハルとも、桂馬とも。


「どうしてって…俺あんたに考えといてって言わなかったっけ。」


「考えてって……!」


サングラスをずらして、桂馬がそういうので、私の記憶は一気にあの日に逆戻りして、勝手に全身が熱を持った。


「まさか、ビギナーの癖に忘れてたの?上等だな。」

「いっ、いやいやいや…忘れてなんて…」


むしろその後の展開が上回っていて、それだけでいっぱいいっぱいだったんですけど。


「ま、元気そうで良かったよ。つーか、観せてもらった?PVの試写会来なかっただろ。」

「…あの日で、一応最後という約束だったので。」


元々完成なんて観るつもりはなかった。だって自分が映っていると考えただけで、恐ろしくて観ることができない。しかも関係者全員と観るなんて、恥ずかしいを通り越して、悶えるだろう。でも他は観たい気もするので、一人きりの時にでも覚悟して観ようと考えていたのだ。