いろはにほへと


私の通う女子校は、周囲をぐるりと塀が囲っていて、さらにその周りを樹木が囲っていた。森と呼ぶような大したものではないが、ただの植え込みと言うには語弊がある。

今私が連れ込まれたのはまさにそこで、正門から僅か数メートルの所にあるものの、意外と道行く人からは気付かれない場所だ。

勿論大きな声を出せばすぐに分かる距離でもあって、危険な程に鬱蒼としている訳ではない。

だがまぁ、学校近辺という事もあり、特に早い時間帯である今、人通りは少ないのだけれど。



「人が折角忙しい中わざわざ待っててやってんのに、素通りとか、人違いとか、随分言ってくれる分際になったんだな?」



塞がれていた口が自由になった私は、声のボリュームに慎重になりつつ、それでも驚きは隠せなかった。


「桂馬、くん!?」



そう、私の前に現れたのは、阿立桂馬だったのだ。