いろはにほへと

私が立っている場所は、ちょうど校門の前。

あと一歩で、学校の敷地に入る所だ。


声は、もう少し手前、校門の傍から聞こえたように思える。


ということは、一旦私は声の主の前を素通りしている筈だ。


考え事していたせいで、気付かなかったと振り返ると。




ー誰。



銀髪サングラス帽子マスク男子(多分)が立っていた。



「素通りすんなコラ。」



唖然としている私にツカツカと歩み寄って、しかも機嫌の悪そうな殿方は一体。



「失礼ですが同姓同名の人違いかと思います。では。」



私はぺこりと頭を下げ、校門をくぐろうと歩き出す。

が。

「なわけないだろーがよ。忘れたとは言わせないぜ、メイ。」


「とと……」


肩にかけた鞄を引っ張られ、二歩戻る形に。



ーメイ???


「あっ……うぷ」


「もうちょい周りに気を配ろうな?」


分かった所で口を塞がれて、物陰に引きずり込まれた。


完全拉致だ。