いろはにほへと

降りる駅のアナウンスで我に返った私は、慌てた。


「すいません、降ります。」


奥の方にいたので、ドアまで人をかき分けるようにして行き、頭を下げ下げ、やっとの思いでホームに降りた。



ー9月20日。


今日が、そのルールが解かれる日だ。

澤田との勉強会は、嘘ではなかったが、家で一緒に聴くことになっている。


ー今日は曲だけですよね。


改札を足早に通り過ぎながら、緊張が走る。


結局、早川さんから荷物は送られてきたけど、完成したPVを観ることはなかった。YouTubeでアップされていれば良いが、そこまで早く公開されてはいないだろう。出てくるとしてももっと後だろうし、全ては掲載されない。CM程度には観れるだろうが、全部は中々難しいだろう。




「そこのJK」



ー私が聴かせてもらったあれも、原曲だから、完成したのはもっと変わってるところがあるのかもしれませんね。



「おいって。」


楽しみにしてしまっている自分がいる。

トモハルの声が聴ける。

それだけで、胸が震える程嬉しい。


「中条ひなの!」



…………。


ー今私、呼ばれたでしょうか。


学校はもう目の前だというのに。

そして時間帯はこんなに早いのに。

しかも男性の声ではありませんでしたか?