「俺の事、嫌いだったら嫌いで良いから。」
自分はまだ前髪アイテムを有しているトモハルは優しく笑う。
「でも、俺はひなののこと、好きだよ。」
さらりとそう言って、トモハルは私の頭をわしゃわしゃ撫でる。
「・・・・・」
反対に私は、色んなことがショック過ぎて、しばし思考回路が停止中。
無惨にも、床に落ちた前髪達を、私は呆然としながら見つめた。
「大家さーん、朝ごはんお願いしまーす!」
全ての元凶であるトモハルは、相変わらず明るくそう言って、私の肩を掴み、台所の方へ向かせる。
真っ白になった頭の中は、今しがた起こったショッキングな出来事を分析するのを拒否している。
「俺は、雨降ってるけど、昨日さぼった草刈するから!」
トモハルは元気に立ち去って、ラジオから流れてくるシャコンヌは一番の盛り上がり。
まさに悲劇が起きました、的な。
ふら、ふら、と台所へ向かい、いつもの動作で自分を取り戻そうと試みた。
結果。
「…本当に、ごめんなさい…、もう、しないから。。。なんならさっきの前髪セロテープでくっつけるから…」
食卓に広がるのは、青柳さんからいただいたイナゴの佃煮。白いご飯。イナゴの佃煮入り味噌汁。イナゴの佃煮入り卵焼き。イナゴの…
「だからっ!!!!この足とか手とか、あるやつとかないやつとかっ!!目が合うのとかっ!!入れないで!!お願いだから!!!」
トモハル、大騒ぎ。


