いろはにほへと


「ーもう、観たのか…」

驚いたように、まこちゃんの目が見開かれ、直ぐに落ち着く。


「強制的にね。全部じゃないけど。」


そう言った所で、直しに入っていた二人が離れた。


「かなり、好評なんだ、あれ。売れっ子の桂馬が出てることもあって、話題性もあるし。 まだそんなに流されていないのに、彼女は誰なんだって問い合わせが殺到ー」


「話が違う。」


即座に返すと、まこちゃんが、っはぁー!と苛々混じりの息を吐く。


「監督が入れたんだ。この世界で話が違うことなんてごまんとある。無い方がおかしい。そんなことよくわかってるだろ。」



がしがしと頭を掻き、まこちゃんは必死で自分を制してるようだったが、俺だって譲れなかった。



「なんでっ…」



「本番入りまーす!」


言い合いになりそうな俺とまこちゃんを、止めるかのように入ったスタッフの声。



「ーもう変更は出来ない。文句があるならもっと前に言え。今度の事は、最初に観なかったお前の責任だ。」



束の間、まこちゃんと睨み合い。


「遥さん、スタンバイお願いしまーす!」



再びスタッフの声が掛かった為に、まこちゃんは俺に背を向け、俺はやるせない思いを抱えたまま、既にスタンバイしているメンバーの元へと向かった。