いろはにほへと

誰にも会いたくない。

できれば、本番まで静かにどこかで一人でいたい。

気付けば、重い鉄扉を開けて、非常階段をひたすら登り続けている自分がいる。


体力はあんまり自信がない。

息が切れて、呼吸が乱れる。

歌のために取っておかなきゃと思うけど。

冷房のない空間は空気が止まってるようで、暑いような、ヒヤリとするような、不思議な感覚。


カン、カンと踵が落ちる度に響く音。


ああなんで俺。


こんなにしんどいんだろう。


オトナ、なのに。


なんで、逃げてんだろう。


いや、大人の方が逃げ方が上手くなる。


ー『ガキか?』



桂馬にさっき言われた事が、リフレインしてる。


そうだよ。

ガキだよ。

ガキになりてぇよ。


後も先も考えないで。


失敗を恐れないで。


失敗しても、それでも良いって、言えるくらい。

また、起き上がれば良いんだからさ、と思えるくらい。


実際なってみると起き上がるのも大変だし、失敗はきつい。

でもそれを、知らない。

世間知らずの、ガキになりたい。