いろはにほへと

「ひなのはさー、俺のこと、嫌い?」






トモハルからの、不意を突く問いかけ。






ラジオの曲はちょうどヴィターリのシャコンヌが流れている。






駄目だ。



また前髪が伸びたらしい。



益々、トモハルの顔がよく見えない。





「きらい・・・・?」






誰かを嫌うといった感情は、そういえば、持ったことがない。



何故ならそこまで誰かと知り合ったことがないからだ。





小中の男子は恐かった。



じゃ、今は?



電車や駅で一緒になる男の人については考えたこともない。




だって、そこまで興味を持たなかったし、興味を持たれなかった。




かといって、女子ならいいか、恐くないかと訊かれれば、そうでもないことを自覚している。




自分は地味で暗くて影が薄くて。




そんなポジションなわけで。




文句もないし、嫌だと思うこともなかったし、一向に構わなかった。




自分は地味で暗くて静かに過ごすことをこよなく愛している。



誰かと関わるなんてごめんだ。





なぜなら―。





「嫌いです。」




気付けば、言葉が、口から零れていた。




「私は、貴方が嫌いです。」