トモハルのことを、出逢ってから一度も、怖いと感じたことはなかった。
知らない人みたいな。
別人みたいな、トモハル。
雑誌で見かける時も、街中に貼られたポスターの中に見つけた時も、私の知らないトモハルが、いた。
本当のトモハルは、もっと人懐っこくて、優しくて、柔らかくて、笑ってて、子供みたいなのにって、どこかで感じていた。
だけど。
ー思い違いだったのでしょうか。
「ひっ、ひっ…うー」
本来のトモハルが、自分の知らないトモハルで。
自分の知っているトモハルの方が嘘だったんだろうか。
対人恐怖症に近かった自分には、考察する材料すらない。
その上、恋愛初心者の自分には、突然の接吻が何を意味するのかもわからない。
桂馬のキスから始まって起こった一連の出来事については、キャパをオーバーして、回路が途絶えてしまった感情があって、放置されたままになっている。


