いろはにほへと

「じっ、自分でどけてくださいっ!!」




「そりゃ、頑張ったけど―見てよ、これ。」





トモハルは悲しそうな顔をして、自分の足先を指差す。




顔を掌で隠していて、見えない。






「ちゃんと見てよ!ここ!刺されたの!」





「…とにかく服を着てください。薬は台所の戸棚に緑の十字マークがついた木箱がありますから、そこからとって付けといたらどうですか。」





私は目を隠したまま、トモハルの脇を通り、廊下に出ようと試みる。



冗談じゃない。


こんなのに構っていたら、心臓がいくつあっても足りない。



昨日から原因不明の動悸息切れが続いて、ただでさえ己の身を案じているというのに。





「無理ー!!ひなの、薬付けて!お願い!」





「ひっ」





トモハルの脇を通り過ぎた所で、手首をがしりと掴まれる。




びしょ、と濡れた感触と、人肌が、モロに自分に触れている。






「放してください…」



「じゃ、薬付けてくれる?」




なんでこの人はいつもこうなんだろう。



なんで、私なんかと関わりを持とうとするんだろう。