いろはにほへと







「忘れられそう?」



打ち上げは後日。

私は、丁重にそれをお断りして、車に乗り込んだ。

最後なんだから、早川さんの車に乗っても良かったのだけど、なんとなく流れで、桂馬と一緒に帰ることになる。

早川さんとはスタジオで待ち合わせをした。


すっかり真っ暗になった道のりを、車窓からぼーっと眺めていると、桂馬が声を掛けてきて、私は返す言葉に詰まった。


この一年間だって、別に想い続けようと思った訳ではないのに。

全然薄らぐことのなかった、想い。


一週間でどうにか、なんて甘かった。



「まだ…掛かりそうです…」



ふい、と窓から視線を落とし、呟くように答えた。


「そう。じゃ…さ」


含むような言い方に、桂馬を見れば、彼はチラリと前の二人に目をやって。



「手伝おうか。」



「へ。」


トーンを落とした声で、私を見つめた。

間の抜けた返事は、自分のだ。


瞬時に、以前の記憶が蘇り、強く首を横に振る。



「い、い、い、いいです!!!」

「うるさいぞー何やってんだ、中条。」


うつらうつらしていたらしい喜一ちゃんの、助手席から寝惚け声が降ってくる。


桂馬は悪戯っぽく笑い。


「付き合ってあげる。」





真っ赤になった私の耳元で、囁いた。