「あの…私は、本来、あるべきではない姿で、ここに居ます。と、いうのは…普段の私は、人と目を合わせることも、難しく感じていてー」
全ての事の発端は、トモハルだった。
トモハルと出逢った頃の自分は、どんなだったっけ。
誰かと関わるのが苦手で、誰かと目を合わせるのが苦手で。
植物をいじったり、掃除をしていることの方がずっと楽で。
長い前髪という盾を使って、自分を守っていた。
トモハルと出逢って。
前髪を切られて。
一緒の時間を過ごすようになって。
初めて、人の居なくなる寂しさを知った。
分かり合える距離を知った。
長い夢だったのかと思ったけれど、それでも、トモハルのことを知りたくて、クラスメイトだった人と距離を縮めた。
それは思いの外勇気が要ったけれど、思いの外簡単でもあった。
それからは、人と話すことに対して、病的な程の恐れを感じることは少なくなった。
暗くて、地味で、影が薄い事に変わりはないけれど、恋を知った。


