いろはにほへと

しかし、この涙は、そこからくる感情とは出処が違うということを、私ははっきりと自覚していた。



トモハル。

これで、さよなら。


「しんどい?」


隣にいる桂馬が、首を傾げて、私を見る。


「へ?」


何のことだかわからず、訊き返すと、桂馬は苦笑しながら視線を前にずらした。まるで見てみろ、と言うように。


「あっ…」



桂馬の見つめた先を辿ると、監督やスタッフ達が揃って私を見ている。



「一言欲しいって。」


どうやら、挨拶を求められているらしい。



「め、滅相もないです!出来ないですよ。桂馬くんお願いします!」


コソコソ桂馬に訴えると、今度こそ彼は呆れた表情をした。



「俺、今言ったばっかりなんだけど」



「えっ…」



全然聞いてなかった。



「俺の挨拶中に意識ぶっ飛ばしてるとは良い度胸してんな。ほら、早く言え。」



「う、、…はい…」


桂馬の剣幕に押され、もう一度きちんと皆に向き直うと、人の多さに、勇気が百分の一ぐらいに搾られた感じがする。