いろはにほへと








「OK!!!!!!」






大きな監督の声で、自分の想いに彷徨っていた私は、我に返った。




ー撮影中だったんだ…


確かめるように振り返れば視界はぼやけていて。



「そんなに泣くシーンじゃないのに」


苦笑混じりの声が、隣で響く。


「え?…あ…」


桂馬に言われて初めて、自分の目からぼたぼたと涙が流れ落ちていることに気づいた。

自分の手でそれを掬い、確かめれば、生温かい。



「おつかれさん!!!」



呆然としている私と、その隣に並んだ桂馬の所へ、監督が晴れやかに声をかけた。



「えー、今回の撮影は、これにて終了です!」



スタッフの一人がそう言うと、たちまち拍手が沸き起こり、お互いを労る声が上がる。



「主演の二人、強行スケジュールだったにも関わらず、本当によく頑張ってくれました!」



「え、え。。わわ」


花束を渡され、私はおろおろたじたじ。


「どうも。」


桂馬は、涼しい顔で御礼を述べる。