いろはにほへと


桂馬を捜すのに、きょろきょろと辺りを見回しながら、先を見れば。



ーあ、あそこに!



数メートル先に、桂馬の後ろ姿を発見。



ーもう、家の前って言ってたのに、あんな所まで行ってしまって。



仕方ないなぁ、と小さく頬を膨らませ。





「待ってください!」




素でついつい叫んでしまった。

そこへ。




「はい、カーット!!!」




「!」


ーやってしまった!!!


気付いても、時既に遅し。


余りにそのままの演技をしてしまった。

というか、素過ぎて、演技、ではない。



「す、すいませ…」



「いやー、良かった!今のは良かった!一発OK!」


謝罪しなくちゃ、と頭を下げた途端、監督の声が掛かり、スタッフから小さなどよめきが起こる。



「え?え??」



私だけ事態を把握できずに、おろおろと挙動不審な反応と瞬きを繰り返した。



ーお、OKって、、、


昨日散々な目に遇っておきながら、最初から一発OK。


湧きそうにない実感が、じわりじわりと背中からよじ登ってこようとしている。



ーなんで…


別段、何ら努力はしていなかったし、心掛けも変わっていない。

むしろ、一瞬カメラの存在を忘れそうになった位だった。

それなのに。