いろはにほへと

とりあえず、私は見慣れない玄関で、靴を履くのに手間取っているフリをする。


と、いうか。


ーフリじゃなくても、手間取っていますけど!?


普段、ローファーを履いている私は、運動靴…つまり紐履を履くことが滅多にない。

ましてや、固く結んである紐。

そのまま履くには、キツい。


一度紐を外して、足を入れたら再び結ぶ。


おかげで、スタッフからのGOサインが出るまでギリギリ靴を履くという作業に徹する事が出来た。


ーええと、桂馬が家の前で待ってるって言ってたな…


少々つんのめりながら、慌てて玄関から外に出た。


が。


ーあ、あれ?


居るはずの桂馬が居ない。


ーさっき家の前で待ってるって言ってたのに???


自分が出てくるのが遅かったのか、と途端に冷や汗が噴き出す。


ーでもスタッフさんの合図には間に合った筈…


だからこそまだ撮影は続いているのだから。



ー多分まだ大丈夫!早く桂馬の所に行かなきゃ。


慌てて小さな門を開いて、カメラ、スタッフの大勢待機している道路に出た。