いろはにほへと





トモハルの顔が浮かぶ。


トモハルは相変わらず優しいけれど。


こっちに来てからのトモハルは、姫子さんの家にいる時と違う人みたいに見える時がある。


頼りなくて、虫が苦手で、我が儘で、うるさくて、突拍子もないトモハルは、どこに行ってしまったんだろう。


いつも笑ってるけど、どの笑顔も、姫子さんの家で見たのとは少し違う。



「着いたよ。って、いつの間に、そんな仲良くなったの?さては昨日トンズラした間か!?」



ひとつのイヤホンを共有している私達を振り返った喜一ちゃんが、驚いたように叫んだので、私もはっと我に返った。



「演技の為だから。」



桂馬はしれっと答えて、イヤホンを回収し、さっさと車から降りる。


私も慌てて降りようとして。



「桂馬に変な虫が付いたら困るんだよね。」


喜一ちゃんが聞こえるように言った言葉を、まんまと拾ってしまった。



聞こえなかったふりをして、降りたけど。




ー私が悪いっていうの!?



一方的な嫌疑に、むかむかが再発した。