いろはにほへと


運転手さんの顔は見えるけど、どちらも知らない。


あたふたしていると、先に着た方の後部座席のスライドドアが開いた。



「おはよ」


「!」


びっくりして声が出なかった。

目の前に飛び出してきたのは、キャップを深く被っただけの、トモハル。


車から降りることなく、上半身だけ身を乗り出して。


「がんばってね。」


片手で軽く私を抱き寄せた。


トモハルの匂いが、一気に自分を包んで、直ぐに離れていった。




「遥はね、心配してるんだよ。過保護だから。」



キィ君が奥からにやにやと笑って見ている。



「そうそう、俺等は今日別の場所で撮影があるから、一緒に付いていてあげられないからね。」



ソージも、うんうんと頷いた。



「まぁ、まこちゃんは置いて行くから、何かあったら、まこちゃんに。」


トモハルが言う。


「あ、はい。ありがとうございます…あの。。。それを言う為にわざわざ…?」



目を瞬かせて、訊ねると。



「うん。」



トモハルが、あの笑顔で人懐っこく頷いた。