そして、廊下の陰に置いてあったらしい黒のリュックを慌てて探る。



小さい外付けのポケットも探り、自分のズボンのポケットも探る。




やがて、この世の終わりみたいな顔をして呟く。



「……どうしよう、、、ひなの…俺、、お財布、無いみたい…」




「・・・・・・・・・・」




がっかりしたいのは、こっちなんだが。



夏休み中の一ヶ月の生活費は、私のお年玉と一年間貯めたお小遣いとで賄われている。



どうして、高校生の私が、どう考えたって年上の、男の人の面倒を見なくちゃならないんだろう。




というか、トモハルは元々お金がない人なんだろうか。



お洒落貧乏なんだろうか。





「ちゃ、ちゃんと、返すよ!俺、こう見えても結構持ってるし!」






無言が痛く突き刺さるのか、トモハルは両手をぶんぶんと振って誤魔化す。




慈善活動。



ボランティア。



そう思おう。


そうすれば、なんとなく、今の状況を受け入れられる気がする。






「・・・一人分も、二人分も、大して変わらないから良いです…」






そう言って、出て行こうとすると。





「ひなのー!!!!!」



「きゃぁっ」




背後から突撃を喰らった。