いろはにほへと

「・・・・・・・」




少しの間、思考回路が停止する。



この茶髪男を家に置くということは、私の素晴らしい孤独時間が失われることを意味する。



ひとりっきりで、姫子さんとの思い出に浸り、姫子さんの屋敷の手入れをし、なおかつ、夏休みに出された宿題をやる。



その上、前髪が長いこと以外に、私とこの茶髪男に共通点はないという事実に気づきつつある。






「っ、あのっ、ね?さっき男の人たちきたでしょ?実はすっごく悪い奴なんだよ。俺の大事な物を、俺が嫌だっていうのに売ろうとするんだ。」




無言でいる私に、茶髪男は必死で頼んでも居ない説明をしてくる。





「…それは、大変ですね。」




「うわ、何その心の籠もってない感じ、、、絶対大変だと思ってないだろ?!」





無駄に賑やかな茶髪男と対面しながら、私は段々と面倒くささを感じ始める。




あぁ、騒がしい。




「…あの、ですね。」




「はいっ!!」




口を開くと、五月蝿い返事が返ってくる。





「私は、静かなのが、好きなんです。ちなみにいえば、一人が好きです。」




「あ、大丈夫。これだけ広ければ、どっか一個の部屋貸してもらえれば、そこで生活して邪魔しないようにするから。」




なんだ、そんなことか、というように茶髪男はへらりと笑った。