「つまり―承諾しない限り、ひなのは逃げ続けなくちゃならないってこと。暫く姫子さん家には帰れないよ。」




ごめーんね。と、トモハルは眉を下げた。




「っ…」



冗談じゃないと言いかけたその瞬間。




コンコン



「はーい、お待たせぇ!お茶とお菓子持ってきたわよぉ。ここのとーっても美味しいのよぉ!!」



「あっ、いなごじゃないっ!ありがとうございます!」



タイミング悪く入ってきた青柳さんに、トモハルが元気に返事をした。




私は―。




まだ姫子さんの家に着いたばかりだというのに、その上、受験生だというのに、帰れないなんて。



しかもトモハルと逃亡者になるなんて。



懐かしの青柳邸で、落とされた、トモハルの先行き見えない爆弾発言に、心を大きく掻き乱されていた。