何も知らなかった自分が、トモハルに心地良かったと聞かされても。
気付けなかった自分自身が、私はずっと、嫌だった。
「ひなのとの時間は楽しかったよ。けど、迷惑はこれ以上かけられないから。さよならしてから、会うつもりも、本当はなかったんだ。」
あーあ、とトモハルは自分を笑った。
「でも、難しかった。作った曲が、もう…ひなののことしか考えてなかった。もう一回、会いたいなって思ったんだよ。それで、ちゃんと向き合って、ありがとうって言おうって。」
私は必死で、涙が零れないように、唇を噛む。
トモハルの口調はなんだかこれで最後、と言っているように感じる。
「あ、ああれ、…なんで、あの曲、、、irohaって言うんですか…」
どもりながら、顔を上げる事無く訊ねると、トモハルが「え!?」と素っ頓狂な声を上げた。
「ひなの、アレ聴いてくれたの!?!?!」
ねぇねぇ!と肩をがばと掴み、揺さぶるせいで、零れないようにしておいた涙が散る。
前髪が隠してくれているおかげでトモハルには見えないのでぎりぎりセーフだ。


