慣れた手付きで雨戸を開けに行き、掃除の為に窓を開け放す。


階段下の物置に掃除用具一式を取り出し、最後に赤いラジオを縁側に置いた。





「懐かしいですね…」




ぽつり呟くと、私はラジオのスイッチを入れた。




≪それでは、本日のお題、『美しき別れ話』と曲のリクエストの方、行って見たいと思いまーす!ええっと、ハンドルネーム、ナポリタンさん!≫



脚立に乗って、リズミカルに叩きをかけながら、私は姫子さんの家に到着する時間も、掃除を開始する時間も同じなんだろうか、と感心してしまう。



昨年と同じラジオ番組ではないだろうか。





≪『ムー子さんこんにちは。』はい、こんにちは!『私には忘れられない人が居ます。小さい頃からコンプレックスばかりだった私は自分に自信がなかったのですが、彼に出逢って初めてこんな自分を好きになりました。』≫




―ん?





私は叩きを止めて、耳をラジオに集中させた。